結果報告
Result report

「総評」

スーザン・ソンタグの批評家としての地位を不動のものにした「反解釈」所収の評論が「キャンプについてのノート」だ。キャンプという感覚は言葉で説明した時点でキャンプでなくなるというもので、特徴的兆候は「人工的」「都会的牧歌」「誇張」「あらゆるものをカッコつきで見る」「両性具有的」「マニエリスム」といった具合の一種の審美主義である。

私は、建築とは異なるインテリアデザインの出自や性向にとって、そうした審美主義は欠かせないものだと思っていたので、今回のIDMの展示には密かに得心したところがあった。会場には「キャンプ」な感覚が横溢していたのである。

突き板の木目に聖堂らしき図像を浮かび上がらせる光の箱(渡辺力×北三)。極小世界を表層に具現化する象嵌細工(望月貴文)。有田焼の表層誇張(SUPER PENGUIN×KINSHODO)。アクリル厚板レーザーカットの人工的極み(SOL style×まどか株式会社)。文字と図像の両性具有なワンダーランド(ヨウコフラクチュール/雲野一鮮×コニカミノルタ)。廃材ガラスによる都会的牧歌の茶室(浦一也×イッコウ+リグラスラボ)。

インテリアデザイン周辺の縦割り的ジャンル区分けはとっくに賞味期限を終えている。これらの展示に見られる触覚現象への着目は、空間と工芸のジャンルを自在に横断する試みとして評価したい。

25を超えるインテリア関連団体の連携=IDMの活動は始まったばかりである。IDMの最初の展覧会の試みで今回のような「キャンプ的傾向」が生じたのは極めて興味深い。それは偶然ではなく何事かの「再起動」なのかもしれない。

IDM TOKYO 2018 IDMアワード審査委員長
飯島 直樹

  制作者  
■大 賞
イッコウ+リグラスラボ(株ニットー)×
(株)エービーシー商会
Ikkou Re・Glass Art Inc /
ABC Trading Co.,Ltd
■優秀賞
「フラウム」
ヨウコフラクチュール/
雲野一鮮×コニカミノルタ株式会社
Design Unit「fRAum」
YOKO FRAKTUR×KAZUKI KUMONO×
KONICA MINOLTA
SOL style×まどか株式会社 SOL style&Madoka.co.Ltd.
株式会社三英×株式会社天童木工×
株式会社フィールドフォー・デザインオフィス
SAN-EI×TENDO×
FIELD FOUR DESIGN OFFICE
■入 選
SUPER PENGUIN×KINSHODO SUPER PENGUIN+KINSHODO
ゾウガニスタ 望月 貴文 ZOUGANISTA di TAKAFUMI MOCHIZUKI
株式会社JOKE.渡辺 力×北三株式会社 JOKE.Inc. RIKI WATANABE&HOXANE
■特別入選
株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザイン ISETAN MITSUKOSHI PROPERTY DESIGN LTD.

撮影:辻谷 宏(株式会社ナカサアンドパートナーズ)


審査委員:窪田 茂(JCD 理事長/窪田建築都市研究所代表)

初めてのIDMアワードだったが、数多くの優れた作品が発表され、私たち審査委員は、かなり悩ましい状況となった。
優秀賞を取った3作品は、いずれも最新技術とアナログ的な感覚を合わせもったものが多く、これからの新しい視点や発想の在り方として繋がっていくものであり、訪れた人々に、大きな刺激を与えたのではないだろうか。

●title ICE MELT SPACE
大判で極厚のアクリルの展示なのだが、これには驚かされた。この極厚のアクリルにレーザーカットで無数に切り込みを入れる事で、この極厚のアクリルがグニャっと曲がる!これを壁と一体の建具のように展示し、曲がる加工を蝶番にみたて、壁自体が曲がるというアイデア。それ以外にも、新しい試みがなされ、アクリルの可能性を大きく躍進させていた。

●title 文字×空間×未来
手描きの文字(カリグラフィー)と、最新の有機EL照明の融合。正に最新テクノロジーとアナログの融合は、ハイテクだけではない、人の温もりを感じる事ができる。何よりカリグラフィーそのもののデザインセンスが素晴らしく、そこに文章のストーリーが組み合わさり、他には類をみないものとなっていた。

●title Allez!!
PLAY OFFICEというコンセプトのもと、家具のような遊具をオフィスに設置するという提案。様々な企業が、働くという事の新しいスタイルを模索している中、このAllez!!に座るだけで、童心に帰る事ができ、新しい発想をする手助けになってくれるだろう。まさに「遊び心」である。


審査委員:橋本夕紀夫(JCD 正会員/橋本橋本夕紀夫デザインスタジオ代表)

IDM TOKYO 2018に出品された作品は新しい機能を含めたデザインの提案から素材開発に至るまで様々な表現がなされ、まさに、この企画のタイトルである、デザイン再起動にふさわしいものであった。そして特にデザインアワードの入選作として選ばれた3作品は素材と向き合い、今までになかったアプローチの素材提案ア及び技術を示すものであった。

● SUPER PENGUIN x KINSHODOの有田焼は、インテリア向けタイルの提案で、従来の白磁の印象を取り除いたメタリック系の新しい質感をつくりだしていた。

● 株式会社JOKE渡辺力と北三株式会社による作品は、個性的な木目の突板に、光をあてることによって一枚の大きな絵画のように見せ、自然の作り上げた造形美を際立たせた。

● ゾウガニスタ望月貴文は、伝統的な象嵌技術を用いてアンティーックの靴の木型を魅力的なオブジェに仕立てていった。そしてこれらの作品はデザインという行為そのものが、素材と深く関わっていると言う事を改めて示してくれた。

● 特別入選評
一見すると最新のデザインに見える株式会社三越伊勢丹プロパティデザインのバンブーチェアは、なんと昭和12年に三越家具設計室においてデザインされたものの復刻である。さらにFSC®森林認証のとれた木材を使用することにより、社会的意義のあるプロダクトをつくりだした。
デザインの持つ普遍性とは、時間の経過とともに少しづつ手を加えることによって得られるものかもしれない。そんなことを考えさせられた作品である。


審査委員:丹羽 浩之(JID 理事長/ JCD 理事/ヴォイド代表取締役)

●title 株式会社JOKE. 渡辺 力×北三株式会社
  JOKE.Inc. RIKI WATANABE & HOXAN

多くのインテリア団体が一堂に会するIDM2018初の試みIDM アワードはインテリアの過去と未来を繋げる作品が多かったように感じる。

その中で北三株式会社の突板を使用した渡辺力さんの作品は
様々な突板に存在する個性ある木目柄を活かしながら、その浮き出てくる文様を、文字通り時間を重ねたヨーロッパの宗教建築のような表現を、照明に透かすことによって浮き上がらせ、なんとも言えない重厚なストーリーを感じさせる作品となっていた。
まさに既存の素材のポテンシャルを無限の可能性を広げて見せてくれた作品だと感じた。


審査委員:高橋 正明(建築デザインジャーナリスト/ブライズヘット代表)

IDMアワードは、初回ということもあり、カテゴリー、コンセプト、動機、プレゼンテーションが多種多様で、それに点数をつけると言うことにまず非常に高いハードルを感じざるを得なかったが、将来の業界の結束と協力という視座に寄りつつも、私個人の興味と志向で選考をさせていただいた。いうまでもなく、全ての作品にそれなりの新機軸を込められていたことを認めるのには何らの躊躇はなかった。大賞作品については、審査員の方々の評にお任せし、私が気になった作品についてのコメントをさせていただく。

●title「文字×空間×未来」FRAum X KONICA MINOLTA
人間の性向として文字があると必ず読みたくなる、ということを心理学者やビジュアルのプロがつとに指摘しているが、それほどに文字の力は強い。文字は物語(ストーリー)になることで、さらに存在を色濃くする。文字を二次元のデザインに閉じ込めておくのはもったいない。立体に空間に活かすことはこれからもっと行われるだろう。カリグラフィーと言う古いものが最新の照明テクノロジーによってイマドキのものになる。創造性とは新しいものの中にだけあるのではなく、古いものの中にもある。それを見つけるのが想像力であり、才能であり、表現者=デザイナーの手腕にかかっている。

●title「pray」RIKI WATANBEUR X HOXAN
ツキ板と言うありふれたものに着目したことが、まず面白い。地味で見慣れた素材でありエレメントであるが、現場を知る人ならふとそこに魅力や愛着を感じることもあるに違いない。そのツキ板を樹木崇拝にまで遡ってコンセプトに練り上げ、その魅力を引き出すインスタレーションとして構成している。見慣れたものが見慣れぬものに、また見慣れぬものが見慣れたものとして立ち現れることの発見はものづくりのプロだけが知る喜びであり創造神への感謝の祈り(pray)と言えるだろう。

●title「ARITA/2018」SUPER PENGUIN X KKINSHODO
  日本には数多くの伝統工芸のリソースがあり、その沃野にはまだまだこれからの活用と応用の期待がかけられる。有田焼もその一つである。伝統的なものは元来が概ね自然由来のものが中心であり、未来を睨んでケミカルなもの、アーティフィシャルなものから少しずつ離脱を図るべき時に、大きな助けとなってくれる可能性がある。ただ、そこにはまだまだ解決すべき課題と乗り越えるべき壁があるだろう。有田からの勇気ある一歩にも。